たとえば、東京都新宿区から神奈川県横浜市に本店を移転する場合、登記所の管轄が変わるため、登記申請も2度必要です。
この場合は、
- 旧管轄(新宿出張所)に「本店移転による閉鎖登記」申請
- 新管轄(横浜地方法務局)に「本店設置登記」申請
このように、移転日を挟んで、管轄の両方に登記を行う必要があるため、スケジュール管理が重要です。
4. 定款変更の必要性と決議方法
本店所在地が定款に「○○区」や「○○市」と明記されている場合、その地名を変更する必要があります。その際には、以下のような決議が求められます。
- 株式会社:株主総会の特別決議(議決権の過半数出席+3分の2以上の賛成)
- 合同会社:社員の同意(全員一致が原則)
同一市区町村内の場合、定款の記載を変更しない限り、決議は不要なケースもあります。
5. 登記手続きの流れと必要書類
以下は、登記手続きの一般的な流れと書類です。
● 手続きの流れ
- 決議(取締役会や株主総会)
- 移転日(会社が移転した日)
- 移転日から2週間以内に登記申請(管轄外の場合は旧・新双方)
● 必要書類
- 株主総会議事録または取締役会議事録
- 登記申請書
- 印鑑届出書(移転に伴い印鑑を変更する場合)
- 定款の写し(変更箇所)
- 委任状(司法書士に依頼する場合)
6. 登録免許税と司法書士報酬の相場
■ 登録免許税
- 同一管轄内移転:3万円(定額)
- 管轄外移転:3万円 × 2(合計6万円)
■ 司法書士報酬(参考)
- 同一市区町村内:3万〜
- 管轄外移転:4万〜8万円程度(複雑さによる)
※法人印や登記事項証明書の取得費用などは別途。
※管轄外移転と同時にする変更登記については、別に費用が発生します。
7. 本店移転にともなう届出関係(税務署・銀行等)
登記変更後は、以下の機関にも届け出を行う必要があります。
- 税務署・都道府県税事務所・市区町村役所(異動届)
- 年金事務所・ハローワーク・労働基準監督署(従業員がいる場合)
- 金融機関(銀行):住所変更届、印鑑変更届など
- 取引先・顧客:郵送物や契約書住所の変更対応
特に許認可事業を行っている会社は、行政庁への届出が必須になる場合があります。移転前に確認しておくことが大切です。
8. まとめ:移転後は早めの登記申請を!
本店移転は、会社にとって重要な転機です。
しかし、登記や行政手続きが不十分だと、信頼の損失や手続きの停滞を招きます。
✅ 同一市区町村内かどうかで、定款変更の要否が変わる
✅ 管轄外移転の場合は、2つの法務局への申請が必要
✅ 登記申請は移転日から2週間以内が原則
✅ 登録免許税と専門家報酬の把握を事前に
✅ 関係官庁・金融機関等への届出も忘れずに!
本店を移したら、法務局への登記とともに、税務・労務・実務の整理まで一貫して対応するのがスムーズです。
複雑な場合は、司法書士や税理士に相談して、確実な手続きを行いましょう。