事業目的を変更するには、株主総会の特別決議が必要です。具体的には、以下の手順で進めます。
- 株主総会を開催し、事業目的の変更を決議(特別決議)
- 決議後、2週間以内に法務局へ登記申請
- 新しい定款を作成・保管
特別決議とは、議決権の過半数を有する株主が出席し、そのうち3分の2以上の賛成が必要な決議です。
中小企業では、代表者=株主というケースも多く、手続きが簡略に感じられるかもしれませんが、法的には株主総会議事録の作成は必要です。
4. 登記申請に必要な書類と費用
事業目的変更登記に必要な主な書類は次のとおりです:
- 株主総会議事録(目的変更の特別決議)
- 登記申請書
- 印鑑届書(必要に応じて)
- 委任状(司法書士に依頼する場合)
- 登録免許税:3万円(定額)
なお、同時に他の登記(役員変更や本店移転など)をする場合でも、目的変更は単独で3万円が必要になります。
5. よくある目的文言の例とポイント
目的の記載は自由ですが、曖昧すぎる表現や実体のない目的は避けるべきです。以下に、実務でよく用いられる文言例を紹介します。
- インターネットを利用した各種情報提供サービス
- 食料品、雑貨、衣料品の輸出入及び販売
- 建設業法に基づく各種工事の請負
- 古物営業法に基づく古物の売買
- 前各号に附帯する一切の業務
最後の「附帯業務」の記載は、関連業務を網羅する目的でよく使用されます。
【注意】許認可業種に該当する場合(例:宅建業、古物商など)は、所管行政庁が求める表現を定款に反映しておく必要があります。
6. 目的変更時の注意点と補助金・融資への影響
目的の記載が不適切だと、次のような不都合が生じることがあります。
- 金融機関が融資を渋る(事業内容の整合性が取れない場合)
- 補助金の審査で落とされる(目的に対応する事業でないとみなされる)
- 許認可が下りない(申請業務に目的記載が必要)
このようなリスクを防ぐためにも、目的の記載内容は具体的かつ正確である必要があります。
また、新規事業を始める前に**「目的変更が必要か」を必ず確認する**ことが重要です。
7. まとめ:事業の節目には目的登記の見直しを!
事業目的の変更登記は、ただの"名義変更"ではなく、会社の事業実態と法的整合性を保つために欠かせない重要な手続きです。
✅ 株主総会の特別決議が必要
✅ 目的文言は明確かつ具体的に
✅ 融資・補助金・許認可の取得にも影響
「うちの定款、10年以上見ていないな…」という方は、この機会にぜひ一度、目的記載の内容を確認されることをおすすめします。
次回(第4回)は、「商号変更登記」について詳しく解説します。ブランド刷新やイメージチェンジ、合同会社から株式会社への変更など、商号変更時のポイントを取り上げます。