【司法書士が解説】最小行政区を超える本店移転登記など、定款変更と株主総会決議が必要な理由とは?

2025年07月14日

会社の本店移転に関する登記手続きは、移転先によって必要な準備や決議が大きく異なります。特に、本店を「市区町村」単位で越えて移転する場合は注意が必要です。このような移転では、定款の変更が必須となり、株主総会での特別決議も求められます。
また、移転先が現在の法務局の管轄外にある場合には、さらに手続きが複雑になります。

本記事では、会社の本店所在地を最小行政区(市区町村)を越えて変更する場合に必要な、定款変更・株主総会決議の具体的な流れと注意点を司法書士の視点で詳しく解説します。これから本店を別の市へ移転しようと考えている企業担当者や経営者の方は、ぜひ参考にしてください。

目次

  1. 市区町村を越える本店移転とは?
  2. なぜ定款変更が必要なのか
  3. 株主総会の開催と特別決議
  4. 手続きの流れと必要書類
  5. 実務上の注意点
  6. まとめ

1. 市区町村を越える本店移転とは?

 会社の本店所在地を「高松市」から「丸亀市」に変更するなど、市区町村の境界を越える移転を行う場合、これは「最小行政区外への移転」に該当します。

 このような移転では、会社の定款に記載された本店所在地の範囲を超えることになるため、定款の変更が必要となります。

 なお、最小行政区を超える移転でも同一法務局の管轄内である場合(例:高松地方法務局の管轄内で移動)は、登記の申請先は変わりません。しかし、管轄外へ移転する場合(次回解説予定)は「経由同時申請」など、さらに手続きが増えることになります。

2. なぜ定款変更が必要なのか

 定款は会社の基本規則を定めたものであり、会社の組織や目的、本店所在地などが記載されています。
 本店所在地については、以下のような記載がされていることが一般的です:

  • 例:第○条 本店は香川県高松市に置く。

 このように記載されている場合、高松市外へ移転するには「定款の変更」が必要になります。
 これは、定款に記載された所在地と実際の所在地が一致していなければならないという、会社法上の要請によるものです。

 そのため、行政区をまたぐ移転では、必ず株主総会で定款変更を行うことが前提となります。

3. 株主総会の開催と特別決議

 定款を変更するには、株主総会での特別決議が必要です。
 特別決議とは、以下の要件を満たす必要があります:

  • 株主総会の出席者が、議決権の過半数を有していること(定足数)
  • 出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成があること(決議要件)

 この手続きを経て、定款に記載されている本店所在地を新しい市町村に変更しなければなりません。
 そして、その後で本店移転自体を取締役会(あるいは取締役の決定)で正式に決定します。

 ここで重要なのは、「定款変更の決議」と「移転先の決定」は別の意思決定であるという点です。
 株主総会の議事録と、取締役会の議事録の両方を用意する必要があります。

4. 手続きの流れと必要書類

市区町村を越える本店移転の場合、一般的な手続きの流れは以下のようになります:

株主総会を開催(定款変更の決議)
→ 定款の本店所在地を変更

取締役会または取締役にて移転先住所を正式決定
→ 本店移転の意思決定

登記申請書類の準備

  • 株主総会議事録
  • 取締役会議事録
  • 定款変更後の定款
  • 登記申請書
  • 会社代表者の印鑑届書(管轄外へ移転する場合のみ)
  • 登録免許税:3万円(同一管轄)、または6万円(管轄外)

法務局への登記申請
→ 同一管轄内であれば管轄変更はなし

 定款変更の登記は不要ですが、本店移転の登記は法定義務ですので、移転から2週間以内に登記申請を行う必要があります(会社法第915条)

5. 実務上の注意点

 最小行政区をまたぐ移転は、単なる「引っ越し」ではなく、会社の基本規則に関わる重要な変更であるため、以下の点に注意してください。

  • 株主のスケジュール調整に時間がかかるため、日程計画は早めに
  • 定款変更後に住所を決定するスケジュール感も調整が必要
  • 定款変更の議事録には議決権数と決議要件を正確に記録すること
  • 移転先の物件契約は、定款変更が通る見込みを考慮して慎重に

 また、後の会計処理や各種届出(税務署、年金事務所など)にも影響が出ますので、関係機関への届出も並行して進めることが重要です。

6. まとめ

 会社の本店を市区町村をまたいで移転する場合、定款の変更が必要となり、株主総会での特別決議が必須です。
この手続きを怠ると、登記が受理されなかったり、後に法的トラブルになる可能性があります。

 手続きは煩雑ではありますが、定款の記載内容を確認し、適切な手順で進めれば問題なく移転登記は可能です。

 今後本店を別の市に移す予定がある方は、ぜひ早めに定款の記載を見直し、株主総会の準備に取り掛かってください。

 次回(第3回)は、法務局の管轄をまたぐ本店移転の場合の「経由同時申請」と印鑑届出制度の変更点(令和7年4月21日施行)」について、実務的な視点から詳しく解説します。

変更登記

会社の本店移転に関する登記手続きは、移転先によって必要な準備や決議が大きく異なります。特に、本店を「市区町村」単位で越えて移転する場合は注意が必要です。このような移転では、定款の変更が必須となり、株主総会での特別決議も求められます。
また、移転先が現在の法務局の管轄外にある場合には、さらに手続きが複雑になります。

会社の本店を移転する場合、法務局での「本店移転登記」が必要になります。特に、同じ市区町村内など同一法務局の管轄内での移転であっても、登記の内容や手続きは一律ではありません。
重要なのは、「定款の記載内容がどこまで詳細か」と、「移転先が定款の記載範囲内かどうか」です。これによって、定款変更の要否や、取締役会決議・株主総会決議の必要性が変わってきます

株式会社において何らかの重要事項を決定する際、意思決定機関として「取締役会」があるか否かで、決議の方法や必要な手続きが大きく異なります。とりわけ「取締役会非設置会社」では、法律上取締役会に委ねられていた決議事項の多くが株主総会の決議によって行われることになります。

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