「本店移転登記」とは、会社の本店所在地を移転した場合に、法務局に届け出る登記手続きのことです。これは会社法第911条や商業登記規則に基づき、必ず行う必要があります。
移転には大きく分けて3パターンがあります:
- 同一法務局管轄内での移転(今回のテーマ)
- 管轄外への移転
- 海外など極端なケース
このうち、同一管轄内での移転は一見「軽微な住所変更」と思われがちですが、実は定款に記載された本店所在地の表現によって、手続き内容が大きく異なります。
2. 同一管轄内の移転=住所変更とは限らない
たとえば、香川県高松市内で本店を「高松市〇〇町」から「高松市△△町」へ移すとします。地理的には同じ市内であり、登記上の管轄も同一の法務局(高松地方法務局)内となります。
しかし、重要なのは**定款に「どの範囲で本店所在地が書かれているか」**です。
- 例1:「本店は高松市内に置く」→ 市内であれば定款変更不要
- 例2:「本店は高松市〇〇町〇番〇号に置く」→ 別の町への移転には定款変更が必要
- 例3:「本店は高松市内に置く」→高松法務局管轄は香川県内だが、観音寺市に本店移転する場合、転換変更が必要
このように、「定款の記載」が手続きの分かれ道になります。
3. 定款変更を伴わない本店移転
定款に「本店は高松市内に置く」といった最小行政区(市区町村)までしか記載していない場合、その範囲内での移転であれば、定款変更は不要です。
この場合の決定権限は、次のように定められています。
- 取締役会設置会社の場合:取締役会の決議で決定可能
- 取締役会非設置会社の場合:取締役の過半数の一致による決定
その後、必要書類(取締役会議事録や登記申請書など)を添えて、法務局へ登記申請を行えば完了です。
4. 定款変更を伴う本店移転