【司法書士が解説】同一管轄内での本店移転登記|定款変更の有無で異なる手続きとは?

2025年07月10日

会社の本店を移転する場合、法務局での「本店移転登記」が必要になります。特に、同じ市区町村内など同一法務局の管轄内での移転であっても、登記の内容や手続きは一律ではありません。
重要なのは、「定款の記載内容がどこまで詳細か」と、「移転先が定款の記載範囲内かどうか」です。これによって、定款変更の要否や、取締役会決議・株主総会決議の必要性が変わってきます

本記事では、司法書士の視点から「同一管轄内での本店移転登記」に絞って、分かりやすく手続きの違いや注意点を解説します。これから移転登記を検討されている企業担当者や経営者の方にとって、参考になる内容となっています。

目次

  1. 本店移転登記とは?
  2. 同一管轄内の移転=住所変更とは限らない
  3. 定款変更を伴わない本店移転
  4. 定款変更を伴う本店移転
  5. 手続き上の違いと注意点
  6. まとめ

1. 本店移転登記とは?

 「本店移転登記」とは、会社の本店所在地を移転した場合に、法務局に届け出る登記手続きのことです。これは会社法第911条商業登記規則に基づき、必ず行う必要があります。

 移転には大きく分けて3パターンがあります:

  • 同一法務局管轄内での移転(今回のテーマ)
  • 管轄外への移転
  • 海外など極端なケース

 このうち、同一管轄内での移転は一見「軽微な住所変更」と思われがちですが、実は定款に記載された本店所在地の表現によって、手続き内容が大きく異なります。

2. 同一管轄内の移転=住所変更とは限らない

 たとえば、香川県高松市内で本店を「高松市〇〇町」から「高松市△△町」へ移すとします。地理的には同じ市内であり、登記上の管轄も同一の法務局(高松地方法務局)内となります。

 しかし、重要なのは**定款に「どの範囲で本店所在地が書かれているか」**です。

  • 例1:「本店は高松市内に置く」→ 市内であれば定款変更不要
  • 例2:「本店は高松市〇〇町〇番〇号に置く」→ 別の町への移転には定款変更が必要
  • 例3:「本店は高松市内に置く」→高松法務局管轄は香川県内だが、観音寺市に本店移転する場合、転換変更が必要

 このように、「定款の記載」が手続きの分かれ道になります。

3. 定款変更を伴わない本店移転

 定款に「本店は高松市内に置く」といった最小行政区(市区町村)までしか記載していない場合、その範囲内での移転であれば、定款変更は不要です。

 この場合の決定権限は、次のように定められています。

  • 取締役会設置会社の場合:取締役会の決議で決定可能
  • 取締役会非設置会社の場合:取締役の過半数の一致による決定

 その後、必要書類(取締役会議事録や登記申請書など)を添えて、法務局へ登記申請を行えば完了です。

4. 定款変更を伴う本店移転

 一方、定款に「高松市〇〇町」と具体的な町名まで記載している場合に、他の町へ移転するとなると、定款を変更する必要があります

 定款変更には、会社法上、株主総会の特別決議(出席株主の議決権の3分の2以上の賛成)が必要です。

 この場合の手続きは以下の通りです:

  1. 株主総会の開催(定款変更を議題とする)
  2. 定款変更決議(特別決議)
  3. 移転先の住所を取締役会または取締役が決定
  4. 必要書類を準備し、登記申請

 ここで注意が必要なのは、「定款変更決議」と「本店移転決議」が別個の決議事項として扱われることです。議事録を作成する際も、それぞれを明確に記録しておくことが大切です。

5. 手続き上の違いと注意点

 特に実務上注意しておきたいのは、「定款を変更するかどうか」で準備期間や登記スケジュールに影響が出るという点です。急ぎの移転が必要な場合は、定款の記載を確認し、必要に応じて株主総会の開催準備を前倒しで行うといった対応が求められます。

6. まとめ

 同じ法務局の管轄内であっても、定款の記載内容によって必要な手続きは大きく変わります。市内での引っ越し程度に思えても、定款に細かく住所が記載されていれば、株主総会を開いて定款を変更しなければならないケースもあるのです。

 今後本店移転を予定している企業は、まずは定款の本店所在地の記載を確認しましょう。そのうえで、必要な決議や手続きを計画的に進めることで、登記手続きもスムーズに進みます。

 次回は、「最小行政区を超えて本店を移転する場合」に焦点を当て、定款変更と株主総会決議の重要性についてさらに詳しく解説していきます。お楽しみに。

変更登記

会社の本店移転に関する登記手続きは、移転先によって必要な準備や決議が大きく異なります。特に、本店を「市区町村」単位で越えて移転する場合は注意が必要です。このような移転では、定款の変更が必須となり、株主総会での特別決議も求められます。
また、移転先が現在の法務局の管轄外にある場合には、さらに手続きが複雑になります。

会社の本店を移転する場合、法務局での「本店移転登記」が必要になります。特に、同じ市区町村内など同一法務局の管轄内での移転であっても、登記の内容や手続きは一律ではありません。
重要なのは、「定款の記載内容がどこまで詳細か」と、「移転先が定款の記載範囲内かどうか」です。これによって、定款変更の要否や、取締役会決議・株主総会決議の必要性が変わってきます

株式会社において何らかの重要事項を決定する際、意思決定機関として「取締役会」があるか否かで、決議の方法や必要な手続きが大きく異なります。とりわけ「取締役会非設置会社」では、法律上取締役会に委ねられていた決議事項の多くが株主総会の決議によって行われることになります。

会社の役員変更登記において、就任承諾書や辞任届の提出は不可欠です。しかし、特定の条件下では、株主総会や取締役会の議事録をこれらの書類の代替として利用することが可能です。本記事では、商業登記における就任承諾書と辞任届の役割、議事録を援用する際の要件や注意点について詳しく解説します。香川県高松市のアイリス国際司法書士・行政書士事務所が、実務経験を踏まえてご案内いたします。

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